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今月の23日(木)に行われたイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票。結果は離脱支持票が51.9%で残留支持票48.1%というEU離脱の方向に決定となりました。

投票率は71.8%

やはり私たちのようなバーテンダーとして真っ先に気になるのはスコッチウイスキーが今後どうなってしまうのか、という問題です。

 

スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は今回のEU離脱に関して「スコットランドの人々は、彼らの未来はEUの一部となることだと見ている」との発言をしています。

実際にスコットランドのすべての投票区でもEUへの残留が支持されており、今回の投票に関してさらに一悶着ありそうです。

そこからスタージョン自治政府首相は「スコットランドがその意志に反してEUから取り除かれるのは民主主義的に受け入れがたい」という過激な発言もしており、スコットランドのEUから離脱したくないという意志をはっきりと表明しております。

彼女の前任者であるアレックス・サモンド氏も今回の件について「この投票がスコットランド独立についての第二の国民投票の引き金になる」との示唆を行っています。

このアレックス・サモンド氏の名前を見てピンとこられた方も多いと思います。そう、彼はまだ記憶に新しい2004年9月18日に行われたスコットランド独立投票を率いていた人物です。

結果的に言葉通りになりましたが、今回の件でもキャメロン首相に対して辞任を要求するなど、何かと過激な人物なので今後の動向に注目してみたいと思います。

 

次に、スコットランドと同じく残留票の多かった北アイルランドです。

北アイルランドのシン・フェイン党のデクラン・キアニー党幹事長はアイルランド統一のための国民投票の開催について強く求めています。

スコッチ、アイリッシュ双方のウイスキー業界のみならず、イギリス全体の問題へと普及していきそうな気配が感じられます。

 

 

さて、スコッチウイスキー業界の方へとシフトしていきましょう。

投票前の話にはなりますが、スコッチウイスキー協会(SWA)もEUへの残留を支持していました。

スコッチウイスキーにおいてもEUの果たしていた役割は非常に大きく、まずはブランドや生産者に対する保護が挙げられるでしょう。

EUには地理的表示(PGI)と呼ばれるEU内のブランドの保護政策があります。

これはある製品が特定の国や地域を原産地としており、その品質や評判などの特性がその原産地と結びつきがある場合にその原産地を特定している表示のことになります。

代表的なのはフランスの「シャンパン」やイタリアの「パルミジャーノ・レッジャーノ」など有名銘柄が挙げられます。

この地理的表示で守られていることによって模造品や偽ブランドを防ぐという効果があります。かつてニューワールドのワイン業界でシャンパーニュやボルドーなどの製品が蔓延していたことを思い出させます。

そして、もちろんスコッチウイスキーもこの地理的表示に加わっていました。

 

スコッチウイスキー協会の最高責任者であるディビッド・フロスト氏は以前からスコッチウイスキーがイギリス全土への経済や労働者に与える影響性について言及していました。

イギリスにおけるスピリッツの輸出額は昨年の2015年で54億7000万ドルもの金額に達しています。

今回EUを離脱したことでアメリカや日本を含めたこれらの製品に対する契約を再交渉しなくてならないという懸念も発生しています。特にスコッチウイスキーに慣れているヨーロッパという5億人もの人口を抱える単一市場に、シンプルかつイージーなアプローチによってスコッチウイスキーを販売できなくなるのは大きな痛手です。

2014年のデータにはなりますが、スコッチウイスキーの売上高に占める世界の比率はヨーロッパが37%の最多。続いてアジアの20%。さらに北米市場が15%になります。

いかにスコッチウイスキーにとってヨーロッパという市場が重要なのかがわかると思います。

さらにイギリス本土についての話になりますが、スコッチウイスキーの原材料である大麦はイギリス国内の穀物生産全体の内の70%を占める非常に大きな産業になっています。

EUからの離脱によってヨーロッパ全体、ひいてはアジアやアメリカなどの市場に対して貿易障壁に合うのではないかとの心配も持ちあがっております。

 

この件について、現在スコッチウイスキーのうち29もの蒸留所を所有している大手ディアジオからは、イヴァン・メネセスCEOがEU離脱に強く反対しており、イギリスのエリザベス・トラス環境相もエジンバラ郊外のグレンキンチー蒸留所にてEU離脱に反対の声明を出しています。

 

スコッチウイスキー協会のディビッド・フロスト氏は今回のEU離脱の決定を受けて、スコッチウイスキーの品質は変わることはなく国際的にも秀でた蒸留酒であり続けると確信していると発表。政府を始めすべての党に、EUへの継続的なアクセスやスコッチウイスキーがこれまで築き上げてきた他の市場を守るために思慮深い考慮をとることを主張しています。

 

 

イギリスのEU離脱の影響はスコッチウイスキー業界には避けることのできない試練となるでしょう。早急の課題は、EUや他の市場への安定した供給路の確保。そして第二のスコットランド独立投票の行方も見逃せません。

さらに過去最大に下落したポンドの問題もあります。

ここからスコッチウイスキーの歴史がどう変わっていくのか、今年は激動の時代になるかもしれません。

 

 

スコッチウィスキー 迷宮への招待