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ウイスキーの製造方法について解説していきます。

第2回目はグレーンウイスキーの作り方です。

 

 

前回記事を読まれていない方はこちらからどうぞ。

第1回ウイスキーの作り方について【モルト編】

 

スコッチウイスキーと言えば真っ先にモルトウイスキーが思い浮かぶことかと思います。

現在のようにシングルモルトがブームになる以前は、ジョニーウォーカーやバランタインなどのブレンデッドウイスキーが流行していました。

一方、今回の主役であるグレーンウイスキーはというと、ブレンデッドウイスキーの素材の一つという程度の認識の方が多く、ウイスキーにあまり熱心でない方たちの中には、その存在でさえ認知されていないこともありました。

そのような受難の時を経て、近頃ではようやくグレーンウイスキーが見直されてきております。

サントリーの知多蒸留所からはシングルグレーン知多が発売され、ニッカからも宮城峡蒸留所のカフェグレーンが販売。さらにはボトラーズや限定品生産としてグレーンウイスキーが脚光を浴びるようになってきました。

グレーンウイスキーの蒸留所は一般見学は受けつけていないところが多いのですが、その重要度は日増しに上がってきているのを感じます。

それではさっそくグレーンウイスキーの製法といきたいところですが、まずはその歴史から学んでいきましょう。

 

グレーンウイスキーの歴史

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スコッチウイスキーの歴史を語る上でグレーンウイスキーは欠かすことができない重要なファクターです。

グレーンウイスキーの誕生はブレンデッドウイスキーの発明と密接に絡んでおり、また現在のように世界的な認知を得られることができたのはブレンデッドウイスキーが世界に羽ばたいていったからでした。

 

グレーンウイスキーの生産に必要な連続式蒸留機。この発明なくしては今日のグレーンウイスキーは存在していません。

始まりは1826年。スコットランドのロバート・スタインよって連続式蒸留機が発明されました。

高濃度のアルコールを抽出できる連続式蒸留機は、ロンドンにおけるジンの市場などでも重宝されるようになります。

そして1830年。ローランドのキャメロンブリッジ蒸留所に導入さた連続式蒸留機からグレーンウイスキーの歴史の第一歩が始まることとなりました。

 

翌年の1831年には、アイルランドのイーニアス・コフィーによって連続式蒸留機は改良され、現在使われているものに近い形が誕生しました。

この連続式蒸留機はイーニアス・コフィーが特許(パテント)を取得したので、パテント・スチルとも呼ばれています。

ニッカの宮城峡蒸留所なカフェ式蒸留機というものがこれにあたり、現在でも現役で稼働しております。またこのカフェ式蒸留機の「カフェ」という言葉はイーニアス・コフィーの「コフィー」が訛って発音されているものです。

 

さて、連続式蒸留機の開発によって時代は変わることになります。

ウイスキーの収税官から連続式蒸留機の発明家へと転身したイーニアス・コフィーは、アイルランドにて14年間の特許を取得しました。

当時アイルランドは世界ナンバー1のウイスキー生産量を誇っており、その伝統あるピュア・ポットスチル・ウイスキーはまさに世界を席巻しておりました。

イーニアス・コフィーは連続式蒸留機販売の会社を起ち上げましたが、アイルランドではいっこうに売れませんでした。しかも、その連続式蒸留機の性能もまだまだ改良が必要な段階だったのです。

こうして完成していった連続式蒸留機は、アイルランドではなく、ローランドやアメリカ大陸の蒸留家たちに目をつけられることになります。

 

スコットランドの中でもローランドは地理的にイングランドと近く、収税官の目を逃れることができません。逃れられない税金を何とか対処できないかと考えた挙句、コストダウンの方向へとむかっていきました。

一方、ハイランドの蒸留家たちは税金から逃れるために山深い土地へと旅立っていきます。

この時、偶然にも確立されたのが樽で熟成させるという製法でした。収税官の目を逃れるためにシェリーなどの空き樽に隠しておいたウイスキーが、熟成により素晴らしく変化していたのです。

密造や密輸が盛んであったハイランドのウイスキーは秘密裡でありながらも評判を獲得していきます。

この一連の税金との闘いの運動は1824年、当時評判を博していたザ・グレンリベットを手掛けるジョージ・スミスによって終止符が打たれることになります。スコッチウイスキーとして初めて政府公認の蒸留所として登録されたのでした。

こうして密造時代は幕を閉じて行くことになります。

 

ハイランドのウイスキーは評判を呼び、ウイスキーの品質において劣っていたローランドでは、もはやハイランドに対抗できなくなっていました。

このことから、コストのかかる麦芽メインのウイスキーからの原材料の変更や大量生産化など新しい局面を迎えます。

このときに注目されたのが連続式蒸留機でした。

安価で大量生産の可能な連続式蒸留機はローランドの業者によって導入されていきます。しかし、生産されたウイスキーは風味が乏しく飲み口も軽かったので、グレーンスピリッツとしてロンドンへと送られていくことになりました。

 

それからしばらく時代は進み転機が訪れます。1860年でした。

法改正により、モルトウイスキー同士だけではなく、異なった原材料のウイスキーを混和することが許可されたのです。

当時、モルトウイスキー同士のヴァッティングを行って人気を博していたアンドリュー・アッシャーは、モルトとグレーンを混和させたウイスキーを発明します。これがブレンデッドウイスキー誕生の瞬間でした。

 

これまでクセの強い地酒というイメージのあったスコッチウイスキーが、ブレデッドウイスキーとして製品化されるようになります。

モルトウイスキーのようにクセの強すぎるウイスキーではなく、かと言ってグレーンウイスキーのような物足りない味わいでもない。洗練された味わいを持ちながらも口当たりもいいブレンデッドウイスキーは評判を呼んでいきます。

決定的だったのが1860年代、ヨーロッパで巻き起こったフィロキセラ禍でした。アメリカからもたらされたアブラムシによってヨーロッパのブドウは壊滅していきます。

イギリスの上流階級で流行していたブランデーの輸入も当然のように途絶えていきました。そこへ一躍踊り込んできたのがブレンデッドウイスキーです。

品質の上がったスコッチウイスキーは上流階級の間でも評判を呼ぶようになります。

やがてイギリス帝国全土に普及したスコッチウイスキーは、世界に名を知らしめていくことになりました。

 

少々長かったですが、簡単にグレーンウイスキーの視点からスコッチウイスキーの歴史をおさらいしてみました。

グレーンウイスキーの誕生キーワードは「連続式蒸留機」です。

では順を追って、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの違いを確認していきましょう。

 

原材料

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グレーンウイスキーにおける原材料は名前の通りグレーン(穀物)です。これはモルト(麦芽)に対してつけられている意味合いが強く、基本的には小麦やトウモロコシ、ライ麦や未発芽の大麦などが使用されています。

一概には言えませんが、スコットランドでは冬小麦などの原材料が多いのに比べて日本ではトウモロコシが主流になっております。

何故決まった穀物ではないのかと言うと、高濃度のアルコールが抽出される連続式蒸留では、原材料由来の香味成分も薄く、味わいもライトな飲み口に仕上げられます。こうなってしまうと原材料由来の成分はあまり考慮されることがなく、生産効率の面が注目されるからです。

 

大麦麦芽(モルト)

副材料として使用される麦芽は重要な意味を持ちます。

モルトウイスキーの章でもお話ししましたが、発芽した大麦はデンプン質を糖分に変換させる酵素を備え持っています。

この酵素力は非常に強く、他の穀物のデンプンまで糖化してしまうほどの力を持っております。この酵素力を利用することによって、糖化能力のないグレーンまでも糖化してしまうことができるのです。

仕込み液全体中の麦芽比率は15~25%くらいで済みます。

それではその仕込みの工程を見ていきましょう。

 

仕込み

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主原料である小麦やコーンはハンマーミルと呼ばれる粉砕機によって粉々にされていきます。

高速回転するハンマーによって粉砕された原料は、出口のところにある多孔板やスクリーンによって粒の大きさをコントロールすることができます。

また、ハンマーミル以外にもローラーミルを併用しているところもあり、こちらは文字通りローラーによって圧縮粉砕されます。

モルトウイスキーとは異なり、グレーンウイスキーの工程では基本的にろ過は行いません。なのでより粒度の小さいグリストを使用することができます。

 

粉砕された穀物は仕込み水と共に混和させられます。

そして上記の写真に写っている、クッカーと呼ばれる仕込み釜の中で煮沸(クッキング)されていくのです。このあたりもモルトウイスキーにはない工程ですね。

クッキングが終了した液には、仕込み水と麦芽によって造られた粥状の溶液によって糖化されていきます。

糖化が終了すると、ろ過をせずに発酵槽へと移されていきます。

 

発酵

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ようやくアルコール発酵の準備が整いました。

発酵槽に入れられた糖化液に酵母が添加されます。

モルトウイスキーと同じく酵母によって発酵させますが、あまり個性の出る酵母は選択されません。グレーンウイスキーに求めるクリーンな酒質の邪魔になるからです。

発酵は約3日ほど行われていきます。モルトウイスキーよりも少々長いくらいです。

そして出来上がったモロミには8~10度程度のアルコールが含まれております。

 

蒸留

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モルトウイスキーの蒸留に使用されるポットスチルとは異なり、塔内部に設置されている数十段にもおよぶ棚によって一度の蒸留で複数回の蒸留が行われています。

複数回の蒸留を断続的に行うことにより、90度以上の高濃度アルコールが抽出されていきます。これが連続式蒸留機と呼ばれるものです。

連続式蒸留機は別名マルチカラムとも呼ばれ、複数塔連なる蒸留塔によって構成されております。

では内部の動作を細かく見ていきましょう。

 

モロミ塔の上部に投入されたモロミは順番に下の段へと流れ落ちていきます。

数十段にも及ぶトレーには多数の穴が空けられており、この隙間から立ち昇ってくる蒸気によってモロミは加熱されます。そうすることによってアルコール分が蒸発されていくのです。

また立ち昇っていく気体のアルコールは上段のモロミと接触、液体へと戻ります。

このような動作が蒸留塔内部では、何度も何度も繰り返されているのです。

そうして凝縮されたアルコールは最上部へと昇っていきます。トレーの一段一段がポットスチルと同じような役割をしているので、ピュアなアルコールが確保できるわけです。

最上部には冷却装置が備えつけられており、ここで冷却された蒸気は液体に戻って次の精留塔へと入っていきます。

この精留塔にも同じように数十段にも及ぶトレーが設置されており、下から吹き上げる蒸気によって、液化したアルコールの凝縮は繰り返されていきます。

モロミ塔に残ったアルコール分を含まない蒸留廃液はモロミ塔下部から排出されていきます。

このようにして抽出された高濃度のアルコールは、グレーンウイスキーになるために熟成庫へと進んでいくのです。

 

今回は2塔式の説明でしたが実際にはモロミ塔、精留塔以外にも抽出塔やメチル塔など蒸留所によって役割の異なる多数の塔で構成されています。

一般的に塔の数は4~10塔以上とも言われており、蒸留所ごとによっても改良が進んでいるので正解というものはありません。

上記で紹介したのは一般的なグレーンウイスキーを製造する際に使われている連続式蒸留機ですが、これ以外にも富士御殿場蒸留所ので使用されている「バッチ式のケトル」や宮城峡蒸留所の「カフェ式蒸留機」なども実在しております。

 

コフィースチル

ニッカのグレーンウイスキーと言えばカフェ式蒸留機が有名です。

日本に上陸したは1963年、兵庫県にあった朝日酒造の西宮工場です。そこから仙台の宮城峡蒸留所に移設されることになるのですが、このスチルを注文したのはニッカウヰスキーの創始者「竹鶴正孝」氏です。

当時ですら最新鋭と呼べるものではなかったカフェ式蒸留機を敢えて発注したのは、グレーン由来の風味を残すためだと言われております。

イーニアス・コフィーが開発したカフェ式蒸留機はモロミ塔と精留塔の2塔式になります。現代のマルチカラムと比べればたしかにグレーン由来の成分が残る仕様になっているかと思われます。

ちなみにですが、ロバート・スタインが発明した連続式蒸留機は1塔式だったそうです。

 

熟成

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グレーンウイスキーも樽によって熟成されます。

しかし、モルトウイスキーとは熟成の狙いどころが大きく異なるのがポイントです。

 

グレーンウイスキーは基本的にクリーンで軽やかな味わいが求められています。

そのためにモルトウイスキーで行われているようなファーストフィルのシェリー樽やバーボン樽による熟成はあまり行われることはありません。このような樽の場合、グレーン原酒の香味成分に与える影響が強すぎるのです。

そこでモルトウイスキーを熟成し終わった古い樽などを使用していきます。グレーンウイスキーの信条であるクリーンな味わいを保ちながら熟成されていきます。

 

熟成の終了したグレーンウイスキーは数十種類も集められ、モルトウイスキーとブレンドされることになります。こうしてブレンデッドウイスキーが誕生するのです。

基本的にグレーンウイスキーは単体として製品化されることは少なく、その多くは日の目を浴びることのないままブレンドされていきます。

しかし、グレーンウイスキーを理解することはそのブレンデッドウイスキーを理解することにも繋がるので、もしも呑まれたことのないグレーン蒸留所のボトルを見つけられたのなら、一度はチャレンジしてみることをおすすめします。

 

 

これにてグレーンウイスキーの作り方については終了したいと思います。

第3回目はアイリッシュウイスキーの作り方についてお送りしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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