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ウイスキーの蒸留方法についてです。

第一回として、スコッチやジャパニーズウイスキーに代表されるモルトウイスキーについて解説していこうかと思います。

 

ウイスキーの製造法を解説する前に、まずは原材料についてのおさらいです。

原材料

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モルトウイスキーはその名前に表されるように、モルト(麦芽)を原材料としたウイスキーの名称です。

元々、発芽した大麦を乾燥させるための燃料としてピート(泥炭)が使用されていましたが、今日ではピートを燃料として使う意義はなく、無煙炭などが使用されています。

しかし、スコッチウイスキー独特の風味を生み出すためには、ピートの使用は不可欠です。ですから現代でも、各蒸留所ごとに異なったレシピでピートが使われております。

そして、粉砕された麦芽は仕込み水と共に発酵釜へと移されていきます。ここからアルコール発酵が行われ、蒸留されていきます。

 

それでは大麦・仕込み水・ピートの三つの原材料について見ていきましょう。

大麦

ウイスキーに使用される大麦は大別して二条大麦と六条大麦に分かれます。

スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキー、ビールなどのアルコール類に使用されるのは二条大麦のほうです。

六条大麦は、パンや押し麦などの食用として利用されます。アメリカで生産されるバーボンウイスキーはこちらの六条大麦のほうを使用します。

この二種類の大麦についてですが、大麦自体はどちらも六列(条)あります。しかし、二条大麦の場合は六列のうち二列しか稔らないので二条大麦と呼ばれます。

列の数が少ないかわりに稔る実が大きく、糖化に必要となるデンプンの含量も多いので、アルコール製造などには適した大麦と言えます。

スコッチウイスキー生産では、マッカランなどでファンの多い「ゴールデンプロミス種」という二条大麦が主流でしたが、育成の手間とアルコール収率が低いため、現在では「オプティック種」などが栽培され使用されております。

 

ウイスキーのみならず、酒造りにおいては重要な地位を占めているのが水の品質です。よい水のあるところに酒造りが発展するのはどの国もかわりません。

ウイスキー造りにおいて、水がもっとも活用されるのは浸麦と発酵の工程です。

浸麦は、大麦を発芽させるときに浸けておく水として仕込み水が利用されます。

発酵では、酵母がミネラル分なども栄養として活動したりしますので、仕込み水に含まれているミネラル分が発酵に影響を及ぼします。

スコッチウイスキーでは基本的に軟水が多いですが、グレンモーレンジやハイランドパークなど硬水を使用していることで有名な蒸留所もあります。

 

ピート

スコッチウイスキーとしてもっとも個性的な部分、スモーキーさを生み出す要因になります。

発芽した大麦を乾燥させる時にピートを焚き込むことによって、スモーキーなフレーバーを獲得することができます。

当然、ピートの焚き込み加減によってスモーキーフレーバーの強さは調整されますが、麦芽の水分の蒸発具合によってもスモーキーフレーバーの吸着率が異なります。

ピートはシダやコケ類などが堆積することによってできあがった泥炭なので、採掘される土地によってもフレーバーに変化があります。

スコットランドにおけるピートで特徴的なのがヒース(ヘザー)です。

このヒースと呼ばれる花はスコットランドでは一般的ですが、これがピートが出来上がる際に混ざり込むことによって、ほんのりとした花のようなニュアンスを感じとることができます。

もちろんスコッチウイスキーの中には、ピートをまったく焚き込んでいないウイスキーも存在しています。

 

製麦(モルティング)

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原材料の三つがそろったところで麦芽の精製に移りましょう。ここからがウイスキーの製造工程になります。

 

麦芽を使用する理由

どうして大麦ではなく発芽させた状態である麦芽を使用するかと言うと、大麦にはデンプンは多く含まれていますが、糖分は含まれていないので、直接アルコール発酵には使用できません。なので、このデンプンを糖分に変換させる作業が必要になります。

発芽した大麦は、大麦内にあるデンプンを糖分に変えることによって、成長するエネルギーを得ます。発芽したタイミングで成長を止めることにより、糖分を大麦に消費されることなく、デンプンを糖分に変換させることができる酵素(アミラーゼ)を手に入れることができるからです。

 

製麦

収穫されたばかりの大麦から麦芽を作ろうとしてもうまく発芽してくれません。大麦には休眠期というものがあり、この休眠期を過ぎなければ発芽しないのでしばらく休ませる必要があります。

大体8月末から9月中頃までに収穫された大麦は2ヶ月ほど保管されます。

そして、この休眠期を終えた大麦は浸麦槽(スティーブ)と呼ばれる大きなタンクに入れられます。ここに仕込み水を注ぎ込み大麦に水分を吸収させます。そこから数時間経過すると今度は水を抜き出して酸素を与えます。これを数回行う作業を浸麦といいます。

発芽の準備が整った大麦はコンクリートの床の上に広げられ発芽させます。この時に均一に芽が伸びるようにシャベルなどを使って繰り返し撹拌されます。これがフロアモルティングと呼ばれているものです。

一週間ほど経過すると糖化に充分なほど芽が出ますので、今度はキルン(麦芽乾燥塔)に移されます。

キルンとはウイスキーの蒸留所でお馴染みのパコダ屋根の建物です。現在ではほとんど使用されてはおりませんが、この建物で下から温風をあてることによって大麦の成長を止めます。

基本的には無煙炭により大麦は乾燥させられますが、ここでピートを投入することによってスコッチウイスキー特有のスモーキーフレーバーをつけることができます。

このピートの産地によってヒースや海藻などが混じっており、これがヒース香や磯の香りの元になります。

乾燥の終了した大麦は麦芽として、次は仕込みの段階へと移っていきます。

 

仕込み

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仕込みは、麦芽に含まれているデンプンを糖に変えることによって、アルコール発酵を行うための下準備の工程です。

 

まずは麦芽を粉砕機にかけて、成分が水に溶け込みやすいように粉砕します。

この粉砕された麦芽はグリスト呼ばれ、大(ハスク)中(グリッツ)小(フラワー)三段階のタイプに分けられます。あまり大きなものですと成分が溶け込みませんし、小さすぎても成分が濾しだされてしまいますのでバランスが重要です。

ハスクの中には殻が多く含まれており、これが濾し器のような役目を果たします。単純にグリッツだけでいいというようなものではありません。

バランスよく配合されたグリストは糖化槽(マッシュタン)へ入れられ、70℃ほどの温水と混合されます。

ここで使用される温水は前回の仕込み時に残ったものですが、元々は製麦にも使われた仕込み水です。

 

粥状の混合物であるマッシュには、麦芽から抽出されたデンプンやタンパク質などが含まれています。

このマッシュは糖化が進行しやすい63℃に管理され、30分ほど静置されます。この間に酵素の力によってデンプンなどが分解されていき、麦芽糖やアミノ酸を豊富に含んだ麦汁が出来上がります。

 

 

発酵

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写真に写る発酵槽(ウォッシュバック)はステンレスのものですが、スコッチウイスキーなどではオレゴンパインが作られたものが多いです。また、珍しいところではイチローズモルトがミズナラで作られた発酵槽を使用しています。

 

糖化の工程によって得られた麦汁は20℃ほどに冷却され発酵槽に移されます。ここに酵母を添加すると数時間後には炭酸ガスの泡が浮き出してきて発酵が始まります。

ビールの場合は発酵の前にホップを投入して煮沸しますが、ウイスキーの場合は煮沸しないので殺菌されず、糖化酵素が発酵中も糖分生成を行っています。アルコール度数が高い7、8度のモロミが得られるのはこのためです。

酵母の種類も様々なものがありますが、酵母が糖分を消費することによってアルコールが生成され、それ以外にも炭酸ガスや香味成分が生み出されます。

この活動によって麦汁からモロミへと変化していきます。

発酵時間も長いと酸味のあるモロミが出来上がり、反対に短いと酸味の少ないモロミに仕上がります。

酵母を添加することに簡単にモロミができると思われがちですが、各蒸留所ともにデリケートな作業が要求されています。

 

蒸留

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蒸留とは、出来上がったモロミからアルコールや香味成分を取り出す作業です。水よりもアルコールのほうが沸点が低いため揮発しやすく、これを冷却することによって液体としてアルコールを抽出します。

 

例外はありますが、スコッチやジャパニーズウイスキーではポットスチルと呼ばれる単式蒸留器で2回蒸留されます。

1回目の蒸留は初留と呼ばれ初留釜(ウォッシュスチル)で行われます。ここでは20度ほどのアルコールである蒸留液(ローワイン)が取り出されます。

このときアルコール度数は約3倍ほどに濃縮されます。

アルコール度数7度のモロミからはおよそ21度のローワインが出来上がる計算です。

しかし、このままではアルコール度数が低いため、再度蒸留されなければいけません。

 

2回目の蒸留は再留と呼ばれ再留釜(スピリットスチル)で行います。

アルコール度数は70度ほどに高める必要があります。

蒸留されたばかりのスピリッツはそのまま原液として使用されるわけではなく、中間部分だけを取り出したものが熟成工程へと送られます。このことをミドルカットといいます。

再留された蒸気は初期にはアルコール度数が高く、徐々に低くなっていきます。さらにメチルなどの不快成分も含まれているためにミドルカットは重要な作業です。

この時残った残留液は、先ほどのローワンと共に再留器にまわさます。

 

続いて蒸留器による味わいの変化についてですが、各蒸留所ごとに様々な形があり出来上がる風味も異なっています。

蒸留についてはまだ解明されていない部分も多いため一概には言えませんが、蒸留器がウイスキーに及ぼしている影響は少なくはありません。

背の高い蒸留器は軽い香味が得られ、背の低くずんぐりしたものは重い酒質になると言われています。また、ラインアームという蒸留器の上の部分ですが、これが上を向いていると得られる酒質は軽くなり、下を向いていると重くなるということです。

これ以外にも加熱方法によっても酒質は変わると言われ、直火加熱ですと重く、間接加熱だと軽くなるようです。

ウイスキーの蒸留器が銅製なのは元々加工しやすいという理由もあったのですが、蒸留の際に発生する硫黄化合物が銅と反応することによって不快な成分が取り除かれるという理由もあります。

 

冷却装置も蛇管式(ワームタブ)多管式(コンデンサー)があります。

ワームタブは蛇管を通る蒸気が水を張った桶の中を通ることにより冷却されます。こちらのほうが酒質は重くなるようです。

一般的なコンデンサーの方ですと、広い冷却面積を持っていますので冷却は速いのですが、気体状態で銅との接触時間が長くなります。このことがウイスキーの酒質に影響していると言われています。

 

そして冷却器の前に取り付けるピューリファイヤー有無も影響を与えます。これ置くことによってクリーンなウイスキーを得られることができます。

 

熟成

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2回目の蒸留で得られたスピリッツはニューポットと呼ばれ、まだウイスキーではありません。ここからオーク樽に詰めて熟成させられることによってウイスキーへと変化していきます。

このウイスキーを詰められた樽を保管する倉庫のことをウエアハウスと言います。

 

樽の材質

オーク樽は液漏れが少なく液体を保存しておくには優秀な素材で、アメリカンオーク、スパニッシュオーク、ミズナラなど種類も豊富です。当然、材質によってウイスキーの風味も異なってきます。

 

樽のサイズも容量480lのシェリーバットやパンチョン樽。バーボンに使用される180lのバレルやこれを解体して繋ぎ合わせた230lのホグスヘッドなど、内容量と形によってスピリッツが空気に触れる表面積も変わってきます。

液体の表面積が違うということは、酸化の状態も異なるため熟成に影響を与えます。

 

また、前回どのようなアルコールに使用されていたかも重要であり、シェリー酒やバーボンの再利用樽、新樽、古くなって成分が抽出されつくした樽を新たに内側を焦がす(リチャー)ことによて活性化させたリフィルの樽などがあります。

新樽は木材自体の影響を受けやすいためあまり使用されません。しかし日本で使われているミズナラなどは新樽がほとんどです。

スパニッシュオークのシェリー樽にこだわるマッカランやバーボン樽熟成で成功したグレンモーレンジなど、蒸留所ごとにこだわりがある場合も多く、手に入る樽も違うので熟成に使われる樽ごとにウイスキーが製品化されることも多くあります。

 

熟成とは

出来上がったばかりのニューポットは透明で、荒々しくこのままではウイスキーと呼べるものではありません。

熟成とは、樽材の隙間から不快な成分や水分、アルコールなどが蒸発していくことによって除外され、適度に酸化されることによってスピリッツが科学変化を起こしていく工程です。

樽が保管されている環境にも大きく影響され、温度や湿度によってもアルコール度数や熟成年数が変わってきます。

時が経つにつれてアルコールなどによる刺激も薄れていき、円熟味が追加されます。単に長期間熟成させればよいというものではなく、ピークを過ぎてしまうとウイスキーは徐々に劣化してしまいます。

同じ熟成庫内にあったとしても樽の形や配列の仕方、原酒の違いなどによって、最適な熟成年数は変わってくるので、様々な熟成年数のウイスキーが誕生するわけですね。

 

ブレンド

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製品化で最後に必要なのがブレンドです。これはブレンデッドウイスキーのようなモルトとグレーンの原酒を混ぜ合わせたウイスキーだけではなく、シングルモルトなどでも一般的に行われています。

そもそもシングルモルトとは単一蒸留所で生産されたモルトウイスキーのみを製品化したものであって、品質を安定させるためにも必要な工程です。直接一樽のみを製品化した場合はシングルカスクと表記されています。

この時にアルコールに加水されことで、決まった規格のアルコール度数に調整されます。加水されていないものはカスクストレングスと呼ばれます。

モルトウイスキー同士を混ぜ合わせる行為はヴァッティングと呼ばれており、ヴァッテッドモルトと言われているものは、シングルモルトではないので一つの蒸留所である必要はありません。他にもピュアモルトと呼ばれたりもします。

 

数十種類にもおよぶ原酒はブレンダーの手に渡って製品化する際のレシピが決定されます。

調合されたウイスキーは冷却ろ過され不純物が取り除かれます。この作業を行わなかったものはノンチルフィルタードと呼ばれます。

そして精製された水により加水され、製品化されたものが皆さんの元へ届けられるわけです。

 

 

以上で基本的なスコッチやジャパニーズなどのモルトウイスキーについての解説は終了です。

次回はグレーンウイスキーについての解説を行おうかと思いますので、よろしくお願いします。

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