テキーラの作り方についてです。

伝説によれば伝統的なメキシコの醸造酒であるプルケがコンキスタドールによってブランデーのように蒸留されたという話や山火事の際に偶然発見された、あるいは自然発酵したアガベを食べた動物が酔っぱらうのを見て作り出されたなど数々の逸話がありますが、そのような楽しい寓話はいったん除けておいてテキーラの具体的な作り方について確認していこうと思います。

今回はテキーラを定める規則や各ブランドごとの細かい作り方というわけではなく、100%アガベのようなプレミアム・テキーラ全般に応用できる話になります。

 

 

原材料と栽培から収穫まで

数あるお酒の中でももっとも誤解の多いのがテキーラの原材料です。

現在でもテキーラはサボテンから造られているという勘違いも多く、正式にはアガベ・テキラーナ・ウェーバー・バリエダ・アスール、通称ブルー・アガベと呼ばれるリュウゼツランの一種からできています。このブルー・アガベは他にもアガベ・アスールやスペイン語でマゲイとも呼ばれています。

テキーラの材料となるブルー・アガベは通常6~10年もの長期に渡って栽培され、途中葉先を剪定したり、キオーテと呼ばれる花茎を切り落とされたりします。ブルー・アガベの栽培は基本的には受粉による栽培ではなく、イフエロと呼ばれる子株を育てることによって成長させていくからです。

このようにして成長したアガベはヒマドールと言われる専門の収穫人たちによって収穫されていきます。ヒマドールたちはコアと呼ばれる丸いシャベルのような刃物を使い、アガベを掘り出します。そして余分な葉をそぎ落とし、最終的にピニャと言うアガベの茎の部分だけを回収するのです。

こうして収穫されたピニャは蒸留所へと運ばれていきヒマドールたちの仕事は終了します。

 

ピニャの糖化から発酵、蒸留まで

蒸留所へ運ばれたピニャはそのままではテキーラの材料として使用できません。アガベの持つデンプン質を糖分に代えなければアルコール発酵させられないからです。

ピニャの多くはマンポステラと呼ばれるレンガ製のオーブンや巨大な蒸気圧力釜によって加熱されます。このように蒸し上げられたピニャは甘くて多汁となり、ようやくテキーラの材料として準備が整います。この甘いシロップを利用して製品化したのがGI値が低いと話題になっているアガベシロップです。

加熱されて糖分を得たピニャは水が加えながら搾汁されていきます。

搾汁は伝統的にはタオナと呼ばれる回転式の石臼を使用しますが、現代のテキーラの蒸留所の多くでは機械式の圧搾機が使われています。

ピニャから絞られた糖分を多く含んだ液体は、いよいよアルコール発酵の段階へと移っていきます。

発酵は他のお酒と同じように糖分を二酸化炭素とアルコールに分解していく作業になります。テキーラの発酵はワインやパンの酵母を使用したり、ブルー・アガベの葉に生息しているザイモモナス菌や蒸留所内に住む蔵つき酵母によって自然発酵させていきます。

このようにして発酵が進んだ液体はモストと呼ばれ、アルコール度数は7%前後です。ここから蒸留していくわけですが、テキーラはCRTによるテキーラの規則によって最低二回の蒸留が義務付けられています。

この二回という蒸留回数より多めの三回や四回蒸留を行っているところもありますし、単式蒸留器だけでなく連続式蒸留機を使用しているところもあります。品質を重視している100%アガベを使用したプレミアム・テキーラの多くは単式蒸留器で二回蒸留されているところがほとんどになります。

一回目の蒸留で得られたアルコールはオルディナリオと呼ばれアルコール度数は20%程度です。二回目の蒸留ではウイスキーのようにメチルや他の化合物を含んだヘッドとテールがカットされます。こうしてアルコール度数60%ほどのテキーラの原酒はフィルターにかけられて最終的な製品の度数を考えながら加水調整されていきます。

 

熟成と製品化

テキーラも他の蒸留酒同様、熟成による成分変化によって複雑さやまろやかさを獲得しますがかならずしもすべてが熟成という工程を経るわけではありません。

ブランコのように蒸留後ステンレスタンクなどで安定させてから瓶詰めされるものもあります。

メーカーにより瓶詰めされるタイミングやステンレスタンク、オーク樽などの違いはありますが、ブランコは最大60日以内の熟成が認められています。

種類熟成期間色あい
ブランコなし、あるいは60日以内無色透明
レポサド60日以上1年未満琥珀色
アネホ1年以上3年未満赤みがかった琥珀色
エクストラ・アネホ3年以上赤銅色

熟成されるにつれレポサドやアネホなど、香りや味わいは円熟味を増し変化していきますが、ブランコのようにほとんど熟成されていないものにはテキーラの原材料であるアガベ本来の風味が豊かであるという特徴があります。

レポサド以上の熟成されたテキーラはオーク樽による熟成が義務付けられており、その多くがアメリカンやフレンチ、そしてハンガリアンオークの新樽、あるいは中古のバーボン樽やコニャック樽、ワイン樽も活用されています。

アネホやエクストラ・アネホには600リットル以下という樽のサイズ規制がありますが、基本的に使われているのは180リットルのバーボン樽サイズです。このホワイトオークなどで造られた新しい樽はバーボンのように内側をバーナーで火入れするチャーが行われており、中古樽などにも樽を活性化させるためのリチャーという作業が行われています。

エクストラ・アネホのような長期熟成のテキーラでも3年以上、ましてアネホであれば1年から3年未満とウイスキーと比べると非常に短い熟成期間のように思われますが、これは寒暖の差が激しいハリスコ州では熟成中に自然と蒸発してしまうエンジェルシェアの量が年間10%ほどもあり、スコッチウイスキーと比較するとおよそ5倍ものスピードで進んでいくことになります。このことがテキーラの品質にも影響を及ぼし、伝統的なテキーラの持つ風味が損なわれてしまうため他の蒸留酒よりも短い熟成期間なのです。

最後に熟成の終わったテキーラは指定された地域内で瓶詰めされます。100%ブルー・アガベのテキーラは必ず所定の場所で瓶詰めが行われますが、ミクスト・テキーラに関しては海外での瓶詰めも認められています。ただしCRTの許可を得た工場に限られますが。

各ブランドにおけるプレミアム・テキーラの個性を表現するためにボトル詰される瓶は様々な形ものがあり、ドンフリオのように背の低いボトルやカーのようなドクロボトル。チリやハート型など非常に個性豊かでデザイン性の高いものが多くあります。このこともテキーラと他の蒸留酒との違いを表している一因です。

 

 

最後に

こうして改めてテキーラの作り方を確認していくと、テキーラというお酒はメキシコの伝統と個性を兼ね合わせた特徴的な蒸留酒とも言えます。

日本ではまだまだ理解の少ないテキーラですが、こうして少しずつでも認知の輪が広がっていくことが重要だと思います。日本に入荷されているボトルも年々増加していっていますので、手軽に新しいテキーラにチャレンジできるのが嬉しいですね。

今回は基本的なテキーラの作り方についてでしたが、ここから様々なブランドやボトルによる違いを発見していってください。

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